そろそろレザークラフトに慣れてきて自分で型紙設計をしたい。けど何から決めればいいのか分からない。。そんな方の為に型紙設計時のポイントを解説します!
今回は財布の設計で必要不可欠なカード収納部を例にしたポイント解説です。
この記事を見ればカード収納部設計が分かり、自分で好きな寸法の型紙を作成することが出来るようになります!是非最後までご覧ください!
設計の流れ
カード収納部を設計する際には以下の流れで進めていきます。
- カード収納部の仕様を決める
- ポンチ絵でイメージ図を描く
- 部品点数を決める
- 組図を作成
- 部品図にバラす
それぞれのポイントを解説していきます。
設計のポイント
1.カード収納部の仕様を決める
まずは全体の仕様を決めていきます。ここで決める仕様としては、
- カード収納枚数
- カードの収納方法
- 大まかな幅
- 大まかな高さ
まずカード収納枚数とカードの収納方法を決めます。今回はカードケース用にシンプルな縦2枚収納を設計します。
続いて大まかな幅/高さですがここは飛ばしても構いません。(詳細は組図の段階で決めるので)
ざっくりこのくらいにしたい等イメージがあればOKです。
2.ポンチ絵でイメージ図を描く
仕様が決まったら作図!と行きたいところですが、まずはポンチ絵でイメージ図を作成します。
先に作図を始めてしまうと、もし途中で「あれ?なんかイメージと違う。。」となったときに手戻りが大きくなります。
まずは簡単な手書きで良いので、最初に決めた仕様をもとにポンチ絵を書いてみましょう!絵心が無くても大丈夫(私も無いので。。)、要は以下のポイントだけ分かればOKです。
- 全体のイメージが掴める
- 部品点数が分かる
- 部品の配置が分かる
以下参考のポンチ絵です。
全体のイメージと部品点数、部品の配置が整理できました。
カードケースとしてポンチ絵を書いていますが、①~③がカード収納部ですね。
また、①と⑤は共通のパーツとなります。
3.部品点数を決める
前項でポンチ絵を書いていれば部品点数は決まっていると思います。
ここでリスト化しておくと後で組図、部品図を作るときに迷わずにすみます。
今回は部品点数が少ないですが多くなればなるほどややこしくなるので手書きでもエクセル表でも良いのでここで作っておきましょう。
今回のパーツは以下の通りです。名前は自分でわかりやすい名前でOKです。
①裏側ベース × 2個
②カード収納部1 (T字パーツ)× 1個
③カード収納部2 × 1個
④表側ベース × 1個
4.組図を作成
部品点数が決まったら、組図を描いていきます。
カード収納部の組図を描く流れは以下の通りです。
①幅を決める
②カードの突き出し量と隙間を決める
③カード収納部の高さを決める
④T字パーツの高さを決める
これらが決まれば全体のサイズも自ずと決まってきます。
①幅を決める
カード収納部の幅は以下の3つで決めます。
”カード幅 + カード端~縫い線位置×2 + 縫い線~カード間の余裕×2”
規格で決まっているカード幅は”53.98mm”です。設計上は54mmとして問題ありません。
“カード端~縫い線位置”と”縫い線~カード間の余裕”はそれぞれ片側3mmとします。
※この寸法は適宜変更しますが、私は基本的にこの寸法で設計しています
(白線:カード収納部、赤線:縫い位置、青線:カード)
以上からカード収納部の幅は、
54mm + 3mm×2 + 3mm×2 = 66mm
となります。
ここで2点ポイントです。
★4mmピッチの菱目打ちを使用する前提ですが、幅方向の縫い線の距離が4の倍数になっているか確認
(3mmピッチの菱目打ちの場合は3の倍数)
★縫い線端から段差までの距離が3mmになっているか確認
(3mmピッチの菱目打ちの場合は2mm)
今回は
“幅方向の縫い線の距離”が60mm、
“縫い線端から段差までの距離”が3mmになっているのでOKです。
もし”幅方向の縫い線距離”が4の倍数になっていないと、縫い線の方向転換する際に菱目打ちの位置が中途半端になってしまいます。
そこで菱目打ちピッチの4mmの倍数にしておけばちょうど方向転換する位置に菱目打ちの穴が来てくれます。
実際は設計上の位置に対して多少位置が前後するため、菱目打ち時に微調整は必要になりますがあらかじめ寸法をこのように決めておくことで調整が最小限で済みます。
一方で”縫い線端からの段差までの距離”はあえて4mmピッチマイナス1mmの距離にしておきます。
菱目打ちが段差部分をかわすためです。
もし上記の数値になっていない場合はカード収納部の幅方向サイズを微調整しましょう。
②カードの突き出し量と隙間を決める
続いてカードの突き出し量と隙間です。
カード1部分の突き出し量を13mm、隙間を3mmで
カード2部分の突き出し量を13mm、隙間を15mmとしました。
この数字を変えることで好みのバランスにすることができます。
・カード1
・カード2
③カード収納部の高さを決める
前項で決めた数値に加え、カード高さは85.6mmなので整理すると全体の高さは122.6mmとなります。(細かい計算がめんどくさい場合は初めからカード高さを86mmとして計算してしまっても問題ないです)
そのとき、縫い線の位置を端から3mmとすると、縫い線の距離は116.6mmとなります。
幅方向のポイントで説明したように、4mmピッチの菱目打ちを使用する場合は4mmの倍数としたいので、カード2上部の隙間15mmを14.4mmに調整します。
これで縫い線の距離は116mmで4mmの倍数となりました。
収納部の高さは122mmに決定します。
④T字パーツの高さを決める
T字パーツってなに?って方のために説明しておくと、下図の赤丸の位置に使用するパーツです。
このような形状にすることでパーツ同士の重なりが減り、カード収納部外周部の厚みを薄くすることが出来ます。
全幅Wについてはカード収納部と同じ幅の66mmとします。
またT字パーツの上部分高さH1は前項で16mmと決めています。(カード突き出し量13mm+隙間3mm)
残りは下図のW1、W2、Hを決めます。
まずはW1ですが、ここは縫い線として端から3mm+2mm程度確保できていればあとは好きに決めて問題ないです。ただしW – W1 ✕ 2がW2より小さくなってはいけません。
そうなると下図のような形状になってしまい、使用時に赤丸部へ負荷が集中しやすくなりここを起点に破損してしまうリスクが上がります。(材料力学の用語でいうと応力集中といいます)
↓極端に書くとこんな感じです
ちなみに角がたった部分は応力集中しやすくなるので、赤丸部はアール形状もしくはC面形状にしておくとより破損リスクが低減します。(切り出すのが少し難しくなるのでマストではないです。できる範囲でやりましょう)
続いてW2ですが、制約はあまりありません。
ただしここがカードの底部分になるので強度的に最低限4~6針程度は縫っておいたほうがよいと考えています。
なので私は25mm程度は確保するようにしています。
今回はW1=10mm(+R形状)、W2=26mmとしました。(W2は4mmピッチの菱目打ちで両側1mm余裕ができます)
そしてHです。ここはカードの突き出し量が決まっていれば自ずと決まります。
H = カード高さ – カードの突き出し量 + 縫い代 + 余裕です。
値を代入していくと、
H = 85.6 – 13 + 3 + 3 = 78.6mm
となります。
小数点以下の部分は誤差レベルと考え四捨五入して79mmとしまって問題無いでしょう。(そのまま残しても良いですが、計算ミスのもとにもなるので、私は設計上必要がない限り最終的には四捨五入か、切り上げ/切り捨てなどでキリが良い数字にしています)
少し長くなりましたが、これでT字パーツの寸法が全て決まりました。これで組図は完成です!(ついでにカードケース化しました)
※因みに省略してしまいましたが、T字パーツの下の部分はT字パーツのH1の寸法が決まれば、勝手に決まります
5.部品図ににバラす
これで全てのカード収納部全てのパーツ寸法が決まりました。
最後に型紙として使用できる状態にするために、パーツごとに部品図として組図からバラしていきます。
基本的には印刷しやすいA4サイズの枠で収めるようにしています。(A3サイズ等でも印刷できる方は好きなサイズで収めてもOKです)
出来上がりがこんな感じです。あとは必要に応じてパーツの取り付け位置や糊代などを描いておくと使いやすい型紙になっていくと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
カード収納部の型紙設計の流れから型紙に落とし込むところまで解説しました。
今回はカードを縦に収納するタイプで紹介しましたが、横に納める場合でも応用が効きます。またT字パーツを増やすことで収納枚数も自由に変えることができます。
カード収納部の設計は財布の設計などにおいてほぼ必須なので、考え方を理解しておいて損はありません!
是非トライしてみて下さいね。参考になれば幸いです!
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